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副院長 渋田 健二 |
薬の効果が期待できる乳がん |
乳腺専門施設の当院では乳がんの再発治療も行っていますが、乳がんは他のがんに比べると薬が良く効くことが知られています。今回は私達が行っている薬物治療の代表的な事例を紹介させていただきます。
《 ホルモン療法 》
Aさんは乳がん術後2年目に多発性肺転移が見つかりました。Aさんの乳がん細胞には女性ホルモン受容体があって女性ホルモンにより増殖が促進されるタイプでしたので、女性ホルモンをブロックする薬の服用を開始。その後は検査の度に肺転移のサイズが縮小し続け、4年後には肺転移が消失。再発発見後10年目の現在も元気で過ごされています。
《 化学療法 》
他施設で胸壁、骨、肝臓の再発治療を受けていたBさんは、遠距離の通院がきつくなり自宅に近い私達の施設を訪れました。当初は副作用への懸念と諦めの気持ちから私達が企画した抗がん剤治療に応じなかったBさんでしたが、少量の抗がん剤を1週毎に使用するマイルドな治療法の提案を受け入れてくれて4ヵ月目。
乳がん細胞の勢いを示す腫瘍マーカーの値は正常化し、Bさんは笑顔と希望を取り戻して仕事を続けておられます。
《 分子標的治療 》
Cさんが胸壁のシコリに気付いて、御主人と一緒に別府市から来られたのは乳房切除後2年目の秋でした。Cさんの乳がん細胞の増殖にはHER2蛋白という細胞内分子が関与していることが判っていましたので、その分子を標的として作用する薬による治療を選択。週に一度の外来治療を12回行った後、完全治癒を目指して小手術でシコリを摘出したところ、全ての乳がん細胞が死滅していることが顕微鏡レベルで確認されました。Cさん御夫妻と私達スタッフに喜びが拡がったことは言うまでもありません。
このような薬物治療では、その効果と患者さんのQOL(生活の質)とのバランスを重視していますので、患者さんが前向きの気持ちで立ち向かっている姿が私達医療スタッフの大きな励みとなっています。
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